相続の話の、その奥にあるもの

50代・60代が悩む「親とどう向き合うか」のヒント

最近、相続の個別相談に来られた50代の女性がいました。
「父の気持ちがわからないんです。自分で何かはしているようだけど……」
相談の冒頭で、そうお話しされました。

お母様を亡くされてから、お父様の今後や相続のことが現実的な課題に。
相談のきっかけは「財産の整理をしておきたい」というものでした。

「相談のきっかけ」と「本当のテーマ」 
表向きの相続相談から見えてきた、言葉にならない不安

最初の1時間は、事実確認や制度の説明が中心。
資産の名義や相続人の構成、不動産の扱いなど、
形式的には“情報収集”の時間が流れます。
でも私はいつも感じています。
本当に相談者が話したいのは、書類には載っていないこと。

「兄弟間でもめたくない」
「父の考えが見えない」
「何が“正解”かわからない」

そんな“言葉にならなかった不安や懸念”が、
ふとした瞬間に、ぽろりとこぼれることがあるのです。

「想い」が言葉になった瞬間  
沈黙のあとにぽつりとこぼれた、“本音”の一言

この女性も、しばらく沈黙したあと、こう言いました。

「本当は、面と向かって聞くのが怖くて……、
何を言い返されるかわからないし……
でも、できれば自然な形で、ちゃんと伝えられたらって思っていて。」

私はその場で、無理に答えを出すことはしませんでした。
でも、その想いが言葉になったこと自体が大きな一歩だと思ったのです。
自分の気持ちを少しでも外に出せたことで、
その方の表情は、すこし柔らかくなっていました。

想いに寄り添う相続コンサルとして 制度よりも先に整えておきたい、気持ちの棚卸し

相続には、法律や制度、財産の話ももちろん大切です。
でもそれ以上に、

  • 誰に何を残したいのか
  • 家族にどうあってほしいのか
  • 自分はどんなふうに役割を果たしたいのか

そうした“気持ち”が整理されていることが、
実はもっともトラブルを防ぐ対策になると、私は考えています。

私は法律家ではありません。

でも、相談者の中にある“まだ言葉になっていない想い”を、
一緒に見つけていくことはできる。
それが、私のコンサルタントとしての役割だと思っています。

相談が終わる頃には、こんな言葉が出てくることもあります。

「父と一緒に、お墓の掃除をしてみます」
「母の思い出を語る“家族会議”を開いてみようかな」

そうした行動につながるのは、

相談者ご自身が“気持ちの棚卸し”をされたからこそ、だと思います。
目の前の課題にどう向き合うか。
そして、その奥にある“本当の気持ち”にどう寄り添うか。
その両方に関われる存在でありたいと、あらためて感じた時間でした。

今年も、もう半分が過ぎようとしています。
私自身も、まだ道の途中。
でも一歩ずつ、想いに寄り添う日々を重ねていきたいと思っています。

この記事を書いた人

コラン相続コンサルタント事務所 坂本俊一